大判例

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東京高等裁判所 昭和39年(行ケ)94号 判決

(争いのない事実)

一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨および本件審決理由の要点が、いずれも、原告主張のとおりであることは、本件当事者間に争いのないところである。

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 原告は、本件審決は、引用例の記載内容の認定を誤り、ひいて、本願発明との対比において判断を誤つたものである旨主張するが、この主張は理由がないものといわざるをえない。すなわち、成立に争いのない乙第一号証の一から三(引用例)によれば、引用例に木材人工乾燥法の種類として、「煮沸及び蒸煮乾燥」および「過熱蒸気乾燥」なる項目が掲記され、「煮沸及び蒸煮乾燥」なる項目中には、「此法は水中乾燥と同様、木材は反つて水分を吸収するのであるが、熱湯中に於ては樹液が比較的多量に且つ速かに抽出せられて木材は狂いを減少するのみならず、温度の上昇により多量の熱量を保有し、又凝着力を低下するから爾後の乾燥を容易ならしめるのである。故に煮沸は人工乾燥の準備作業としての効果が多い。即ち煮沸後温度の下らない間に直に炉内に入れる時は、急激なる乾燥をしても内部水分の移動が大きく、表面が硬化しない間に多量の水分を蒸発して割れ其他の損傷が極めて少ない。」(一六四頁一四行目から二〇行目)、「蒸煮も亦之のみによつて完全なる乾燥をなし得ないのであつて、他の乾燥法に併用せられるのである。此法は煮沸乾燥の欠点である炉内積込に際しての温度の降下が防がれるのであつて、通常一台或は二台の台車を入るべきコンクリートの室の内に噴蒸管及加熱管を配列し、木材を搬入密閉したる後、飽和蒸気にて蒸煮するのである。故に其効果は前者(煮沸乾燥)と同様、木材の内部に熱を与へ樹液を抽出するのであるが、水分を吸収することは前者よりも少ない。従つて爾後の乾燥時間も短縮される。」(一六四頁下から二行目から一六五頁五行目)および「之等は一般に狂ひ易い硬材に対して実施せられるものにして、人工乾燥の予備的処理に外ならない。」(一六五頁六行目および七行目)との記載があり、これらの記載に徴すれば、引用例には一般に狂いの生じ易い硬材に対し、急激な乾燥により表面硬化による損傷の生ずることを防止する目的をもつて、他の乾燥法の準備工程として行われる飽和蒸気による蒸煮処理法が開示されているものと認められるところ、一方、前示本願発明の要旨および成立に争いのない甲第五号証(本願発明の明細書)によると、本願発明において、湿潤気体をもつて沸点至近に予熱する準備工程は、「木材中の水分を沸騰せしむる以前に、水分及熱保有量の最も大なる気体を以て、木材に対し、与湿して、その表面乾燥を抑制する条件の下に急速に加熱することを目的」とするものであることが認められるから、本願発明と引用例記載の準備工程とは、その目的および処理方法において、ほとんど実質的な差異を有しないものというべく、また、前記乙第一号証の二によると、引用例に開示された「過熱蒸気乾燥」とは、「一〇〇℃以上の過熱蒸気を用ひて乾燥炉又はシリンダー内にて木材を乾燥する方法」(一六五頁下から四行目および三行目)をいうこと明らかであるから、この引用例の過熱蒸気乾燥法は、本願発明における、「沸点同等以上に加熱して木材中の水分を沸騰せしめ、これを外部に噴出せしめる」処理方法とこれまた顕著なる差異を有しないものと認めることができ、叙上認定を覆すに足る証拠はない。以上認定したところからすると、最終的な木材乾燥処理工程を予定する引用例記載の準備工程たる「蒸煮乾燥」に、同じく引用例記載の「過熱蒸気乾燥」を用いることは、当業者にとつて容易に実施をすることができるところとみるを相当とするから、本願発明をもつて、引用例記載の内容から容旨に推考しうる程度のものとした本件審決の判断は誤りということはできない。

(むすび)

三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法があるとする原告の本訴請求は理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

被乾木材を常圧下において、湿潤気体を以て沸点至近に予熱し、次に沸点同等以上に加熱して木材中の水分を沸騰せしめ、これを外部に噴出せしめることを特徴とする水分沸騰による木材乾燥法。

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